人間の身体には、身体の内部や環境が変化しても、体温や血圧などの調整を通じて身体の状態を一定に保つ、「恒常性の維持(ホメオスタシス)」と呼ばれる機能が存在します。免疫も、病原微生物、ウイルスやがん細胞といった異物(非自己)の排除などを通して生体の恒常性維持に重要な役割を果たしています。 しかしながら、私たちの免疫は加齢とともにその能力が低下するだけでなく、さらに喫煙、運動不足・偏食などの生活習慣、ストレス、あるいは私たちを取り巻く環境の破壊や汚染などによって、そのバランスが崩れると考えられています。多忙な生活によるストレスや寝不足、そして運動不足、また、食品添加物、加工食品などの氾濫に見られる食生活の乱れ、そして大気汚染や日常生活でさらされる様々な化学物質など、私たちを取り巻く現代社会において、残念ながら免疫を弱めてしまう要因は増え続けていると言えるでしょう。 免疫力が慢性的に低下してしまうと、感染症、悪性腫瘍を発症したり、それらの疾患が悪化してしまうと考えられます。また、一方で、免疫力の過剰な亢進は、花粉症、アトピー性皮膚炎や慢性炎症の原因となります。免疫のバランスが保てなくなってしまうことは、私たちの健康維持に深刻な問題をもたらします。
このように、私たちの健康維持に重要な免疫が様々な危険にさられされる中で、食品中の食物繊維や他の難消化性成分が、生体の恒常性維持や免疫応答に深く関与していることが明らかになりました。つまり、これらの成分が、必須栄養素とは異なる作用を介して人間の健康と深く関わることが認められるようになったのです。
現代社会において、最も深刻な疾患の1つはがんでしょう。現在、主流となっているがん治療は手術、放射線、および化学療法ですが、治療技術は進歩しているものの、依然として深刻な副作用を伴う場合も多くあります。また、がんだけでなく、ウィルス性肝炎やHIV感染をはじめとした様々な感染症が拡大すると、これらに対する治療方法を模索する一方、自らの免疫力を強化することで予防・治療に役立てるBRM(Biological Response Modifier)、つまり生物学的応答調節物質がもつ免疫賦活作用への注目が高まってきました。これらの作用は、食品や発酵に使われる微生物に含まれる多糖に多く見られます。代表的なものとして、ビール酵母細胞壁の成分ザイモザン(β-1.3グルカン)、キチンやパン酵母細胞壁の成分α‐1.6マンナン、シイタケ、エノキタケ、マイタケの細胞壁成分β-1.3グルカンなどが挙げられます。
日本でも現代社会の変容、特に食生活の西欧化によってがん、糖尿病、高血圧、心臓疾患のような生活習慣病の増加が大きな社会的な問題として注目を集めるようになりました。このことから、大和グループは、より食品に近い多糖体を用いてこうした問題を解決する製品の開発を着想しました。
最初に素材の選定について、大和薬品研究開発部では、「米」に注目しました。米は、アジア諸国の多くで重要な主食であるとともに、「食」を象徴する崇敬の対象ともされ、長きにわたって人々の身体と精神を支えてきました。そのため、非常に身近な食物で、豊富な食経験によって安全性が裏付けられています。機能性食品は注射などによる体内への投与はできないため、「経口摂取で有効かつ安全である」ことは、機能性食品素材の開発において最も大切なことです。また、米ぬかには、免疫賦活効果があることが知られている多糖が豊富に含まれています。これらのことから、米ぬかを素材とすることに決まりました。
米国Charles R. Drew University of Medicine and ScienceのMamdooh Ghoneum博士は免疫系の中でも、特にナチュラルキラー(NK)細胞に強い関心を持っており、NK細胞ががん細胞を破壊する能力、そして、がん細胞が弱体化したNK細胞に対して反撃して破壊する能力について研究を進めていました。当時Ghoneum博士は、「私は、10年近くにわたってNK細胞を弱体化させ、免疫を抑制してしまう要因について研究してきました。その要素は、ストレス、加齢、そして化学性発がん物質の3つが挙げられます。しかし、それによって免疫が抑制されるメカニズムについてはこれまでの研究では明らかにされていません。」と指摘していました。免疫の阻害因子とNK細胞について研究してきたことから、Ghoneum博士は植物由来の素材で健康に寄与したいという大和グループの研究に興味を持ちました。このことから、Ghoneum博士と大和グループは交流を重ね、1992年に共同研究を開始しました。
RBSの開発は、大和グループの研究開発部が米ぬかを分解して得られた様々な成分の中から、免疫賦活作用が期待されるものを米国のGhoneum博士に送り、それぞれの成分の有効性を測定するという方法からスタートしました。その際、NK細胞の抗腫瘍効果や、マクロファージのTNFα産生量を有効性の指標としました。マクロファージとは、細菌や異物、老廃物を取り込んで捕食して分解したり、他の免疫系細胞を刺激するなど、生体防御において大切な役割を果たす白血球です。 そして、1995年にシイタケ菌糸の培養で得られた炭水化物分解酵素複合体で水溶性食物繊維(ヘミセルロースB)を部分的に加水分解することによって、最も有効性の高い物質を得ることができたのです。これが、RBSです。
RBSは、米ぬかに約5%含まれている水溶性食物繊維(ヘミセルロースB)を主な原料として製造されます。米ぬかのヘミセルロースBは、複雑な構造をもつ食物繊維で、分子量が比較的小さいという特徴を持っていますが、そのままでは免疫に働きかける作用は認められませんでした。しかし、ヘミセルロースBをシイタケ菌糸の培養によって得られた炭水化物分解酵素複合体で部分的に加水分解すると、免疫賦活作用を発現するようになりました。 このことが明らかになると、続いて具体的な製造方法の開発が必要になります。大和グループの研究開発部では、どの程度の量のヘミセルロースBに、どの程度の炭水化物分解酵素を反応させれば最も活性が強くなるかという実験を繰り返し、製造方法の実用化を進めました。炭水化物分解酵素を作り出すキノコ類についても様々な実験が重ねられ、エノキダケだと鼻につく嫌なにおい、シメジやヒラタケだとかび臭が生じ、なめこだと粘性物質のため処置がしにくいなどの問題点があり、最終的にシイタケを使用することになりました。 RBSは、他のアラビノキシランを含有する素材とは異なる、大和グループが独自に開発した製法によるものです。
RBSの開発後も、Ghoneum博士によって、RBSの有効性や作用を明らかにするためにin vitro、in vivoの様々な試験が進められました。また、2002年にGhoneum博士が免疫学における貢献と実績が認められ、イギリスのInternational Biographical Centerから「International Scientist of The Year 2002」の一人に選ばれました。
1992年の開発から27年になるRBSは、世界中の医療機関や大学などで研究を重ねました。その成果は、57報の学術論文や130以上の学会での発表や9カ国で特許を取得するなど世界中の評価を得ています。研究は2019年現在も常に進歩し続けていて、世界中の学者や医師などが集まった国際会議が開かれています。 RBSは世界57カ国で使用され、さまざまな形になり愛用されています。
※RBS米ぬか多糖体の摂取によってすべての疾病に奏功するものではありません。
※RBS米ぬか多糖体は食品の為、公的医療保険が適用されません。
【RBS米ぬか多糖体を摂取する際に考えられるリスクとして】
食物繊維由来であるRBS米ぬか多糖体を一日あたり100g以上摂取した場合、
ごくまれにお腹がゆるくなる可能性があります。
【日本食品機能研究会について】
日本食品機能研究会活動目的ならび運営者については
コチラ